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「岐阜県介護事業所等に対するサービス継続支援補助金」を読み解く — 物価高・猛暑・災害への備えを県が後押し

はじめに

介護事業の経営環境は、ここ数年で大きく様変わりしました。人件費や燃料費、食材料費の上昇に加え、夏の記録的な猛暑、冬の雪害、そして地震や豪雨といった大規模災害のリスク。いずれも「利用者に必要なサービスを届け続ける」という介護事業の根幹を、静かに、しかし確実に圧迫しています。

こうした状況を受けて岐阜県が用意しているのが、**「岐阜県介護事業所等に対するサービス継続支援補助金」**です。訪問・送迎にかかる移動経費から、熱中症対策用品、災害備蓄品の購入費までを幅広く対象とする、実務に直結した補助金です。

本記事では、県の公表資料をもとに、この補助金の枠組みを経営者・管理者の視点から整理し、あわせて名称が似ていて混同されやすい「介護施設等に対するサービス継続支援補助金」との違いにも触れます。


1. 制度の目的 — 「継続できること」そのものを支える

県の説明では、この補助金の目的は次のように示されています。

物価上昇の影響がある中でも、さらには大規模災害の発生時にも、必要な介護サービスを円滑に継続できるよう支援する

ポイントは、支援の対象が「新しい取り組み」ではなく「継続」に置かれていることです。新規事業の立ち上げを促すタイプの補助金とは性格が異なり、今すでに提供しているサービスを止めないための経費が幅広く認められます。猛暑の日でも訪問は止められず、停電が起きても入居者の生活は続く——そうした「止められない仕事」を費用面から後押しするのが、この制度の考え方です。


2. 対象となる事業所と補助単価

補助単価は、サービス種別ごとに設定されています。訪問介護と通所介護については、事業規模に応じた区分が設けられている点が特徴です。

訪問介護事業所(規模別)

区分補助単価
集合住宅併設型(同一建物減算の算定がある事業所)20万円/事業所
1月あたり延べ訪問回数 200回以下30万円/事業所
1月あたり延べ訪問回数 201〜2,000回40万円/事業所
1月あたり延べ訪問回数 2,001回以上50万円/事業所

通所介護事業所(規模別)

区分補助単価
1月あたり延べ利用者数 300人以下20万円/事業所
1月あたり延べ利用者数 301〜600人30万円/事業所
1月あたり延べ利用者数 601人以上40万円/事業所

一律20万円/事業所となるサービス

訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、特定施設入居者生活介護、福祉用具貸与、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、看護小規模多機能型居宅介護、居宅介護支援事業所

居宅介護支援事業所が対象に含まれているのは、見落とされやすいところです。

定員あたり単価となる施設

介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、地域密着型介護老人福祉施設、短期入所生活介護、養護老人ホーム、軽費老人ホームは、定員1人あたり6千円で算定します。

対象外となるサービス

居宅療養管理指導、福祉用具販売、短期入所療養介護、各介護予防サービス、総合事業は対象外です。総合事業のみを実施している事業所は、この補助金の対象になりません。

養護老人ホーム・軽費老人ホームの取扱い

特定施設入居者生活介護の指定を受けている場合でも、養護老人ホーム・軽費老人ホームとして申請します。ただし事業所番号は、特定施設入居者生活介護の指定番号を入力します。特定施設の指定を受けていない場合は、県が公表している「軽費・養護老人ホーム一覧」に記載された番号を仮の番号として使用します。複数の指定を併せ持つ法人ほど間違いやすい箇所ですので、申請前に確認しておきたい点です。


3. 補助対象経費 — 2つの柱

対象経費は大きく2区分に整理されています。

(1)介護サービスを円滑に継続するための対応にかかる経費

気候変動の影響による猛暑など、困難な事態の下でサービスを継続するために必要な費用です。県が示す例としては——

  • 訪問・送迎などの移動にかかる経費
  • ネッククーラー、冷感ポンチョ、熱中症対策ウォッチなどの猛暑対策用品、雪害対策用品の購入費
  • 光熱水費、燃料費など、入居者・利用者の生活環境改善や、職員の負担軽減・勤務環境改善に必要となる経費
  • 業務用スポットクーラー、送風機、遮光カーテンなど、居室等の温湿度管理に必要な物品の購入費

訪問系のガソリン代や施設の電気代といった、多くの事業所で最も重くなっている負担が正面から認められている点で、実務上かなり使い勝手のよい設計です。

(2)大規模災害等への備えにかかる経費

災害発生時にサービスを継続するために必要な費用です。

  • 飲料水、食料品等の備蓄物資
  • ポータブル発電機、ポータブル電源・蓄電池
  • 衛生用品、医療用品
  • 簡易浄水器、冷房機、暖房機、簡易トイレ、清潔保持のための用具
  • その他、災害への備えとして必要と認められる経費

BCP(業務継続計画)の策定・運用が求められる今、計画書に書いた備蓄や電源確保を「実際にそろえる」段階に入っている事業所は多いでしょう。BCPの見直しとあわせて必要物品を洗い出すと、費用の使途を組み立てやすくなります。

個別商品の適否は「自己判断」が原則

ここは注意が必要です。県は、個別の商品に関する適否については問い合わせても回答できないとしています。公表されているQ&Aを確認したうえで、各商品の内容や利用目的を踏まえて事業所側で判断する、という運用です。

したがって実務上は、「なぜこの物品がサービス継続に必要なのか」を自ら説明できる状態にしておくことが重要です。購入の目的、想定する場面、使用する職員や利用者を内部メモとして残しておけば、後々の説明にも耐えられます。


4. 申請手続と、押さえておくべき「予算の範囲内」

受付期間と申請方法

申請受付期間は、令和8年8月10日(月)13時から令和8年9月4日(金)17時まで。申請は郵送や持参ではなく、県が用意する専用の申請フォーム(Web入力)から行います。

参考様式としてExcelの申請書様式も公開されていますが、申請は専用フォームで完結するため、様式で申請書を作成する必要はありません。法人内での資料作成や入力内容の事前整理に活用する位置づけです。実際には、この様式で必要項目を先に埋めてからフォームに入力する進め方が、入力ミスを防ぐうえで確実でしょう。

「予算の範囲内で交付決定」の意味

制度理解として最も重要なのが、この一文です。県は、予算の範囲内で交付決定を行うとしており、申請総額が予算を超過した場合には申請額満額の交付決定とならない可能性があると明記しています。県が挙げている例は次のとおりです。

予算額の2倍程度の申請総額となった場合、交付決定額は申請額の50%程度の額となります。

つまり、単価表の金額は「上限としての目安」であり、確定額ではありません。単価表どおりの入金を前提に大きな支出を組むのではなく、減額の可能性を織り込むのが安全です。交付決定通知を受け取ってから購入計画を最終確定させる流れが望ましいでしょう。

問合せ先

制度全般については、**岐阜県介護・障害福祉サービス継続支援補助金事務局(電話 058-201-3705/平日9時〜17時)**が窓口となっています。ページの内容に関する照会先は、県高齢福祉課 事業者指導係(058-272-8298)です。

なお、交付要綱・実施要綱およびQ&Aが県ホームページで公開されています。交付要綱は介護事業所等と介護施設等に共通のもの、実施要綱は事業所等向けのものが個別に置かれています。実績報告や経費の対象期間といった細部は、これらの原文で確認してください。


5. 混同しやすい「介護施設等」向け補助金との違い

名称がよく似た別制度として、**「岐阜県介護施設等に対するサービス継続支援補助金」**があります。こちらは目的も対象も異なります。

介護事業所等向け介護施設等向け
目的猛暑・災害下でのサービス継続食事提供の質の確保(物価上昇対応)
対象経費移動費、猛暑・災害対策用品、光熱水費等食材料費等(食料品購入費、給食・配食サービス委託料など)
補助上限事業所単位20〜50万円/定員1人あたり6千円定員1人あたり12,000円
対象訪問・通所・居宅介護支援等を含む広範なサービス入所系施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、短期入所生活介護、養護・軽費老人ホーム等)

施設等向けの補助金は、定員数を令和7年4月1日時点で算定し、第一回(令和8年2月〜3月受付)、第二回(令和8年7月受付)と段階的に受付が行われてきました。交付は実績報告の後となる仕組みで、報告時には領収書、レシート、契約書、銀行振込の記録といった支出の根拠資料の写しを添付します。

入所系施設を運営する法人は両制度の対象になり得ます。「もう申請済み」と思っていた補助金が実は別制度だった、という取り違えが起きやすいため、施設種別と対象経費の両面から確認しておくとよいでしょう。


6. 実務として、いま整えておきたいこと

この種の補助金は、要件や単価を変えながら継続されることも少なくありません。次の機会に備えて、以下の3点を平時から整えておくことをおすすめします。

第一に、経費の記録体制です。 移動経費や光熱水費は日常業務の中で発生し続ける費用です。車両ごとの走行記録や燃料費、事業所別の光熱水費を月次で把握できていれば、申請時にも実績報告時にも慌てずに済みます。

第二に、BCPと購入計画の連動です。 備蓄品や非常用電源は「あればよい」ものではなく、想定シナリオに応じて必要な量と種類が決まります。BCP見直しの際に必要物品リストを更新しておけば、補助制度が出たときにすぐ動けます。

第三に、県ホームページの定期確認です。 介護分野の補助制度は受付期間が1か月弱と短いものが少なくありません。県高齢福祉課のページを確認する担当を決めておくだけでも、機会を逃すリスクは下がります。


おわりに

物価上昇、猛暑、災害。いずれも一事業所の努力だけで吸収できる範囲を超えつつあります。その中で、移動経費や光熱水費、災害への備えまでを対象に含めたこの補助金は、現場の実感に近い設計だと言えるでしょう。一方で「予算の範囲内での交付決定」「個別商品の適否は自己判断」といった運用上の条件もあり、制度を正しく理解し根拠を残しながら活用することが、結果として法人を守ることにつながります。

本記事は公表資料に基づく一般的な情報提供です。申請の可否や個別の経費の取扱いについては、必ず岐阜県の公式ページに掲載された要綱・Q&Aの原文をご確認いただき、判断に迷う場合は補助金事務局へお問い合わせください。


参考

  • 岐阜県「岐阜県介護事業所等に対するサービス継続支援補助金について」(高齢福祉課)
  • 岐阜県「岐阜県介護施設等に対するサービス継続支援補助金について」(高齢福祉課)