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電気のBCP対策とは?災害時に事業を止めないための電源確保術

震や台風、大規模停電といった不測の事態は、いつ自社を直撃するか分かりません。オフィスや工場の電力が止まった瞬間、生産ラインは停止し、サーバーはダウンし、日々の業務は立ち行かなくなります。近年は気候変動の影響による大型台風や豪雨災害も増えており、電力インフラが長期間にわたって停止するリスクは決して他人事ではありません。こうしたリスクに備え、あらかじめ「事業を止めない仕組み」を用意しておくことが、企業経営における重要な課題となっています。今回は、電気設備の観点からBCP(事業継続計画)対策を整理し、具体的に何から始めればよいのかをまとめました。すでにBCPを策定している企業でも、電源対策の部分だけが手薄になっているケースは少なくないため、あらためて自社の体制を見直すきっかけとしていただければ幸いです。

BCPとはそもそも何か

BCP(Business Continuity Plan/事業継続計画)とは、災害やシステム障害、テロといった緊急事態が発生した際に、企業が中核となる事業を止めずに継続し、あるいは早期に復旧させるための計画のことです。地震や水害で電気・水道・通信といったインフラが機能しなくなれば、事業活動への打撃は非常に大きくなります。BCPは、そうした緊急時における具体的な行動指針をあらかじめ定めておくことで、経済的な損失を抑え、業務の停止期間を最小限にとどめることを目的としています。

よく似た言葉に「防災対策」がありますが、両者の目的は異なります。防災対策は災害そのものを未然に防ぐ、あるいは被害を軽減するための取り組みです。一方のBCPは、災害が発生した「その後」に主眼を置き、いかに早く事業を立て直すかを重視します。さらにBCPでは、自然災害だけでなくシステム障害や資金繰りの悪化など、より広い範囲のリスクを想定した対応が求められます。

なお介護業界では、2021年度の介護報酬改定を受けて、2024年4月1日からすべての介護事業者にBCPの策定および研修・訓練の実施が義務化されました。感染症の流行や災害が発生しても介護サービスを止めることができないため、業種特性として特に重視されている分野です。

なぜBCP対策がそれほど重要なのか

BCP対策に力を入れる意義は、大きく3つに整理できます。

1つ目は、事業継続と早期復旧を可能にする点です。緊急時でも重要業務を中断せずに継続でき、復旧までの時間を短縮できれば、顧客への影響を抑え、企業への信頼を維持しながら経済的損失を防ぐことができます。

2つ目は、有事における冷静な判断と対応を可能にする点です。あらかじめ危機的状況を想定し、対応手順を具体的に決めておくことで、パニックによる対応の遅れを防ぎ、被害の拡大を最小限に抑えられます。

3つ目は、企業価値の維持・向上につながる点です。BCP対策に取り組んでいる企業は、リスク管理体制が整っていると市場や取引先から評価されやすく、結果として顧客の信頼獲得や企業価値の向上にも結びつきます。

業種によって異なる電源確保の優先順位

電気設備のBCP対策は、業種ごとに求められる優先順位が異なります。

製造業では、停電による製造ラインの停止が大きな損失につながります。また、停電後の復旧時に通電することで二次災害が起きる可能性もあるため注意が必要です。まずは各設備の電力需要を洗い出し、非常用発電機の容量や設置場所を検討することが第一歩となります。

医療・福祉分野では、電力の確保がそのまま患者や利用者の生命に直結します。人工呼吸器や透析装置など、停止が許されない機器を優先的にリストアップし、定期点検や燃料の備蓄と合わせて備えておく必要があります。

オフィスビルでは、勤務者や来訪者の安全確保と事業継続の両立が求められます。エレベーターや照明といった基本設備はもちろん、サーバールームへの電力供給経路の確保も欠かせません。断水時でもトイレやエレベーターを使えるようにする自家発電設備の準備も重要なポイントです。

宿泊施設は建築基準法や消防法による規制が厳しく、停電時にも客室のライフラインや消防設備、エレベーターへの電源を確保する必要があります。地震発生時にはエレベーターが自動停止することが多いものの、稼働し続けるケースもあるため、技術管理者による適切な運転停止と利用停止の周知が求められます。

このように、業種によって「何を最優先で守るべきか」は大きく異なります。自社の業務内容を棚上げにして一般的な対策をそのまま導入するのではなく、まずは停電時に事業へどのような影響が生じるのかを具体的に洗い出すことが、電気設備のBCP対策を検討するうえでの出発点になります。

BCP対策として導入すべき電気設備

緊急時に確実に電力を確保するための代表的な設備として、以下の2つが挙げられます。

非常用発電機は、災害時に必要な電力を供給する中核的な設備です。ガスタービン式、ディーゼルエンジン式、ハイブリッド式など複数の種類があり、用途や規模に応じて選定します。導入コストが気になる場合は、自治体などの助成金・補助金制度が使えないか確認するとよいでしょう。

産業用蓄電池は、あらかじめ発電した電気を蓄えておく設備で、充放電を繰り返せる二次電池が使用されます。一般的な容量は数十kWh程度のため、工場のように数百kWh規模の大容量が必要な場合は導入コストが高くなる傾向があります。また稼働時に発熱するため、廃熱経路や冷却設備、屋外設置時の建屋など設置環境への配慮も必要です。

電気設備を導入するメリット

BCP対策として電気設備を導入することには、災害時だけでなく平常時にもメリットがあります。

まず、停電発生からわずか数秒で電源を確保できる点です。大規模震災では電力復旧までに約1週間かかるケースもあると言われており、サーバーや冷蔵・冷凍設備のように長時間の停止が大きな損失につながる機器には、瞬時の電源切り替えが有効です。マンションであればエレベーターや給水ポンプの稼働を維持し、住民の安全と安心につながります。

次に、平常時の電気代削減につながる点です。電力使用量がピークを迎える時間帯に自家発電設備へ切り替える「ピークカット」を行うことで、契約電力からの使用量を抑え、コスト削減とBCP対策を同時に実現できます。

さらに、消防法や建築基準法で自家発電設備の設置が義務付けられている一定規模以上の建物では、法令に準拠した設備を導入することが、そのまま法令対策・防災対策の強化にもつながります。

導入後は保安点検が不可欠

非常用の電気設備を導入しても、保守点検を怠れば有事の際に正しく機能しないおそれがあります。電気設備の点検は法令で義務付けられており、これを怠ると罰則の対象になる場合もあるため注意が必要です。

主な関連法令は次の3つです。

  • 電気事業法:常用・非常用を問わず、すべての発電設備について、自社で定めた保安規程に基づく月次・年次点検が義務付けられています。
  • 消防法:一定規模以上の対象建物では、6ヶ月ごとの機器点検と1年ごとの総合点検が義務付けられ、結果を所轄消防署へ報告する必要があります。
  • 建築基準法:設備の種類や規模に応じて、特定行政庁が点検の頻度や内容を定めています。

電気設備は人命に関わる重要な設備であるため、資格を持つ専門業者による点検を確実に実施することが欠かせません。

まとめ

電気設備のBCP対策は、災害時の事業継続だけでなく、平常時のコスト削減や法令対応にもつながる、企業経営における投資価値の高い取り組みです。まずは自社の業種特性を踏まえて、停止させてはならない設備をリストアップし、非常用発電機や産業用蓄電池といった選択肢の中から最適な設備を検討してみましょう。

一度設備を導入すれば安心、というわけではない点にも注意が必要です。燃料の劣化やバッテリーの経年劣化、配線設備の不具合など、時間の経過とともに性能は低下していきます。定期的な保安点検を通じて設備の状態を可視化し、いざというときに確実に稼働する状態を維持し続けることが何より重要です。あわせて、実際に発電機を稼働させる訓練や、停電を想定した業務フローの確認を定期的に行うことで、設備面だけでなく運用面での実効性も高まります。

災害はいつ発生するか予測できません。日頃からの備えこそが、事業と従業員、そして顧客を守る第一歩となります。電気設備の選定や保安点検について不明点がある場合は、専門業者への相談も検討してみてください。