病院に非常用発電機は本当に必要?法律・機種選定・補助金まで徹底解説
大規模な地震や台風、豪雨などの自然災害は、いつどこで発生するか予測できません。停電が起きたとき、最も影響を受けやすい施設のひとつが病院です。人工呼吸器や人工透析装置など、電力が止まれば患者の命に直結する医療機器を多数抱えているためです。実際に、停電によって手術や治療の継続が困難になれば、患者の生命だけでなく地域医療そのものの機能が停止してしまうおそれもあります。
だからこそ、病院にとって非常用発電機は「あれば安心」という位置づけではなく、法律で定められた責務であり、地域の防災拠点としての役割を果たすための必須設備といえます。本記事では、病院における非常用発電機の設置義務や関連法規、機種ごとの特徴、そして導入時に使える補助金制度までをまとめてご紹介します。これから発電機の導入や更新を検討している医療機関の方は、ぜひ参考にしてください。
病院の非常用発電機と関係する法律
病院に非常用発電機を設置する際に関わってくる法律は、主に「消防法」「建築基準法」「電気事業法」の3つです。
まず消防法では、延べ床面積が1,000平方メートルを超える特定防火対象物に対し、非常用発電機の設置と定期的な保安点検が義務付けられています。次に建築基準法では、排煙設備を必要とする建物、あるいは延べ面積500平方メートル以上の特殊建築物、さらに高さ31メートルを超えるなど非常用エレベーターの設置が必要な建物について、同様に発電機の設置と点検が求められます。そして電気事業法は、設置された非常用発電機の保安点検そのものを義務化しています。
こうした条文だけを見ると、比較的小規模なクリニックや診療所は対象外に見えるかもしれません。しかし、公益財団法人 全日本病院協会が公表している防災対策の資料では、東日本大震災の際に、災害拠点病院として指定されていない一般の診療所にも多数の患者や避難者が集中したことが報告されています。つまり施設の規模にかかわらず、非常用発電機の設置と定期的なメンテナンスは、地域医療を守るうえで欠かせない備えといえるでしょう。
国家規格が求める性能基準
病院向けの非常用発電機には、日本工業規格(JIS)によって厳格な性能基準が設けられています。大きく分けると次の3タイプです。
- 一般非常用電源:停電から40秒以内に電圧を確立し、10時間以上の連続運転が可能なもの
- 特別非常用電源:停電からわずか10秒以内に電圧を確立し、10時間以上の連続運転が可能なもの
- 無停電非常用電源:蓄電池により交流電力を途切れさせずに10分以上供給し、さらに一般非常用電源と併用することで長時間の稼働も担保するもの
人工心肺装置や人工呼吸器、人工透析装置といった機器は、わずかな電力の中断でも患者の生命に重大な影響を及ぼします。そのため病院で採用する発電機には、一般的な施設よりもはるかに高い信頼性が求められるのです。
病院に適した非常用電源、5つのタイプ
かつてはディーゼルエンジン式が主流でしたが、現在ではさまざまな選択肢が登場しています。それぞれの特徴を理解し、自院の規模や設置環境に合った電源を選ぶことが重要です。
ディーゼルエンジン式発電機は種類が豊富で導入コストが比較的低く、出力も安定しているため、長時間の医療機器使用にも対応しやすい方式です。一方で燃料となる軽油は、災害時にガソリンスタンドからの補給が難しくなるケースがあり、長期の連続運転には不向きな面もあります。加えて冷却装置や排煙対策、振動・騒音への配慮も必要です。
ガスタービン式発電機はLPガスを燃料とし、特に据え置き型が注目されています。振動や騒音が少なく、大規模災害時でもLPガスの供給網が途絶えにくいという実績から、長期的な非常用電源として高く評価されています。複数の医療機器を同時に稼働させる病院では、安定した電源確保の手段として検討する価値があるでしょう。
太陽光発電設備は天候の影響を受けやすく、積雪地域では発電量が落ち込む点がデメリットですが、燃料を必要とせず、屋上などの空きスペースを活用しながら日常の電気代削減にもつながります。降雪の少ない地域や、発電量と使用量の均衡を目指す「ZEB」化を進めたい病院にとっては有力な選択肢です。
蓄電池は容量が大きくなるほど導入費用も上がりますが、電圧の安定性に優れているのが強みです。医療機器の多くは電圧が不安定だと正常に作動しないため、この安定性は非常用電源として大きな価値を持ちます。
**無停電電源装置(UPS)**は、停電発生後も瞬時に交流電源を供給できる装置で、電子カルテなどを扱うパソコンのデータ消失を防ぎます。UPSがなければ停電と同時にシステムが落ちてしまいますが、UPSがあれば安全にデータを保存してからシャットダウンできます。さらに人工呼吸器や人工心肺装置など、瞬間的な停電でも命に関わる機器には、通常のUPS以上に高い絶縁性と信頼性を持つ「医用UPS」が使われます。アメリカの厳格な安全試験に合格した製品のみが医用UPSとして扱われ、病院における最重要機器の電源として位置づけられています。
導入コストを抑える、活用可能な補助金制度
非常用発電機の導入には決して小さくない費用がかかりますが、国や関連団体が用意している補助金制度を活用できるケースがあります。代表的なものとして、次のような制度が挙げられます。
- 災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄を後押しする補助金:経済産業省が実施しており、石油製品タンクやLPガスの災害用バルク設備などの導入費用の一部を助成する制度です。
- BCP(事業継続計画)の実践を後押しする助成金:自治体や産業振興団体が、策定済みのBCPを実行するために必要な設備・物品の導入費用を一部助成する仕組みです。東京都では中小企業振興公社がこの種の助成を行っています。
- LPガスの災害用バルク設備導入を支援する補助金:災害時にも安定して稼働できるLPガスの貯蔵・供給システムの設置費用を一部助成する制度です。
こうした補助金は、実施団体の公募期間が限られていることが多く、また年度によって継続の有無が変わる場合もあります。導入を検討する際は、最新の募集状況を関係省庁や自治体の発表で必ず確認し、応募のタイミングを逃さないようにしましょう。
非常用発電機の選定で押さえておきたい3つの視点
1. 医療機器の消費電力を把握する 人工透析装置は1台あたり約800W、人工呼吸器は1台あたり約210Wの電力を消費するといわれています。両方を保有する病院であれば、最低でも1,000W超をカバーできる容量が必要になる計算です。もちろん消費電力はメーカーや型式によって異なるため、実際の選定にあたっては設置業者やメーカーへの確認が不可欠です。余裕を持った発電容量を確保することが、非常時の安心につながります。
2. 設置スペースと燃料保管場所を確認する 発電機の種類によっては、排煙設備や冷却設備、燃料の保管スペースが別途必要になります。燃料保管には資格や専門知識が求められる場合もあるため、本体の設置場所だけでなく、周辺設備までまとめて検討しておく必要があります。
3. 定期的な保安点検を怠らない 消防法・建築基準法・電気事業法により、非常用発電機は定期的な点検が義務化されています。いざというときに動かないという事態を避けるため、6年おきの負荷試験をはじめとした定期メンテナンスを継続することが重要です。
まとめ
病院にとって非常用発電機は、災害時に患者の命を守るための生命線です。設置には消防法・建築基準法・電気事業法という3つの法律が関わり、機器にはJIS規格に基づく厳しい性能基準が求められます。ディーゼルエンジン式、ガスタービン式、太陽光発電、蓄電池、UPSなど選択肢は多岐にわたるため、自院の規模や医療機器の消費電力、設置環境に応じて最適な組み合わせを検討することが大切です。また、国や自治体が用意する補助金制度を活用できる場合もあるため、導入を検討する際は募集情報を随時チェックすることをおすすめします。
特に近年は、燃料調達のリスクを分散させる観点から、ディーゼルエンジン式とガスタービン式、あるいは蓄電池や太陽光発電を組み合わせた「複数電源方式」を採用する病院も増えています。単一の方式に頼るのではなく、災害の種類や規模に応じて複数の電源を組み合わせておくことで、より確実に医療機能を維持できるようになります。
非常用発電機の導入や既存設備のメンテナンスについてお悩みがあれば、専門業者への相談を通じて、災害時にも安心できる医療体制づくりを進めていきましょう。当社では、病院向け非常用発電機の設置からメンテナンス、法定点検までワンストップでサポートしております。設置場所の選定や補助金の活用についてもお気軽にご相談ください。
