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介護施設に非常用発電機は必要か否か

種類・メリット・選び方を整理する

介護施設には、空調、ナースコール、喀痰吸引器、人工呼吸器、エアマットなど、利用者の健康と生命を直接支える機器が数多く稼働しています。これらの機器は一瞬の電力停止も許されないケースが多く、停電時にどう電力を維持するかは、施設運営における避けて通れない課題です。

近年は地震や豪雨、台風といった自然災害が頻発しており、電力会社側の設備が正常であっても、長時間の停電が発生するケースは珍しくありません。介護施設の場合、一般家庭以上に停電の影響が深刻になりやすく、利用者の身体状況によっては数十分の電力停止が生命の危機に直結することもあります。だからこそ、非常用電源をどう確保しておくかは、施設の規模や運営方針にかかわらず検討しておくべきテーマだと言えるでしょう。本稿では、介護施設で検討されることの多い発電機の種類、導入によって得られる効果、選定や設置のポイントを整理していきます。

発電機にはどんな種類があるのか

非常用電源には複数の方式があり、それぞれ得意な使い方が異なります。まずは代表的なものを見ていきましょう。

ディーゼル発電機は、大容量の電力を安定して供給できる点が特徴です。数千kVA級の機種も存在し、複数の建物や事業所を抱える大規模法人であれば、施設全体の電力需要を一台でカバーできる場合もあります。燃料コストや本体価格の面でも比較的経済的とされ、大規模施設では有力な選択肢になります。

ガソリン発電機は小型で持ち運びやすく、避難時に喀痰吸引器などの医療機器を稼働させる用途に向いています。ただし排気ガスに一酸化炭素を含むため、屋内での使用は非常に危険です。密閉された室内で使用すると、短時間で危険な濃度に達する可能性があるという実験結果も報告されており、屋外専用の機器として扱う必要があります。

LPガス発電機には、建物に固定して設置する定置式と、ガスボンベを使う可搬式があります。LPガスは長期間の保管に強く、稼働音も比較的静かなのが利点です。定置式は国の補助金制度の対象になることがあり、導入コストを抑えられる可能性があります。一方で発電容量はディーゼル式に比べて小さめなため、必要な電力量によっては複数台の設置を検討する必要があります。可搬式は定置式と燃料を統一できるため、両方を併用する施設では管理の手間を減らせるというメリットがあります。使用上の注意点はガソリン発電機と同様で、屋内使用は避けるべきです。

太陽光発電システムは燃料を必要とせず、日中の発電を施設内で使うことで電力消費や燃料コストを抑える効果が期待できます。ただし天候や日照時間に発電量が左右され、降雪時には発電できないという弱点もあるため、単独での非常用電源というよりは、他の発電機や蓄電池と組み合わせて使うのが現実的です。

蓄電池は近年、容量の大型化が進み、施設に設置する介護事業所が増えています。太陽光発電と組み合わせることで、天候に左右されやすい太陽光の弱点を補いながら、日常的なピークカット(電力使用量の多い時間帯の負荷軽減)にも活用できます。また、燃料式の発電機で発電した電力を一時的に蓄電池へ充電し、その後蓄電池からの給電に切り替える「ハイブリッド型」の非常用発電機も登場しており、燃料消費を抑えつつ安定した電源確保が可能になっています。

発電機を導入することで得られる効果

発電機そのものは直接的に収益を生み出す設備ではありません。しかし、導入によって施設が得られる効果は決して小さくありません。

一つ目は、災害への備えとしての意味です。日本は世界的に見ても地震の発生頻度が高い国であり、加えて近年は台風や大雨による被害も増加傾向にあります。介護施設は医療機関やケアマネージャー、利用者の家族など多方面との連絡調整が常に必要な場所であり、通信手段や医療機器を動かす電力が絶たれることは、利用者の安全に直結するリスクとなります。非常用発電機は、そうした災害時のライフラインを守るための備えとして機能します。

二つ目は、事業継続計画(BCP)への対応です。厚生労働省は2024年4月から、介護施設に対してBCPの策定を義務化しました。BCPとは、自然災害や感染症、事故などによって事業が中断した場合でも、可能な限り早期に業務を復旧させるための計画のことを指します。非常時にも介護サービスを継続するためには電力の確保が前提条件となるため、非常用発電機はBCPを実効性のあるものにするための重要な要素だと言えます。

三つ目は、施設としての付加価値の向上です。利用者やその家族が施設を選ぶ際には、サービス内容や利用料金に注目が集まりがちですが、非常時の安全対策が不十分な施設は、長期的に見て選ばれにくくなる可能性があります。「災害時にも利用者の安全を確保できる」という点は、施設の信頼性を支える重要な要素の一つです。

発電機を選ぶときに確認しておきたいこと

非常用発電機を選定する際には、大きく二つのポイントを押さえておく必要があります。

一つは容量です。発電機の容量は、施設内の全機器の必要電力を合計した数値よりも余裕を持たせて選ぶことが基本です。停電からの復旧時には複数の機器がほぼ同時に起動することが想定され、起動時には通常運転時よりも大きな電力を要する機器もあるためです。過剰な容量は無駄になりますが、不足はより大きなリスクにつながるため、「多少余裕を持たせる」という考え方で選定するのが安心です。

もう一つは設置場所の広さです。発電機によっては本体以外に付属設備が必要だったり、壁との距離に規定があったりする場合があります。とくにディーゼル発電機は、冷却装置や排煙装置、燃料の貯蔵量によっては貯蔵設備まで必要になることがあるため、設置スペースは販売・設置業者としっかり相談しながら決めることが望ましいでしょう。

設置後に注意しておきたいこと

導入後の運用面でも、いくつか意識しておきたい点があります。

まず、発電機の振動や騒音です。技術の進歩によって近年の発電機は静音性が向上していますが、振動や騒音が完全にゼロになるわけではありません。災害時、利用者は精神的に不安定になりやすく、そこに機械の作動音や振動が加わることは、できる限り避けたいストレス要因です。導入前に、どの程度の振動・騒音が発生する機種なのかを確認しておくことが大切です。

次に、定期点検の義務です。消防法により、非常用発電機は6年に一度の点検が義務付けられています。この点検には、メンテナンス不足による不始動や停止を防ぐという重要な目的があります。実際に大規模災害の際、メンテナンス不良によって発電機が正常に作動しなかった事例が報告されていることからも、定期点検の重要性がうかがえます。発電機が動かなければ、非常時にどれだけ立派な設備を導入していても意味がありません。

導入を検討する際の進め方

実際に非常用発電機の導入を進める場合、まず取り掛かるべきは「施設内でどの機器を非常時に動かす必要があるか」の洗い出しです。空調や照明のように優先度が比較的低いものと、人工呼吸器や吸引器のように一瞬でも止められないものを区別し、それぞれの消費電力を把握することが第一歩になります。この洗い出しがあいまいなまま発電機の容量を決めてしまうと、実際の停電時に必要な機器を動かせないという事態につながりかねません。

次に、複数の発電機メーカーや設置業者から見積もりを取り、容量・設置スペース・燃料の調達しやすさ・メンテナンス体制を比較することが望ましいでしょう。特にディーゼル式やLPガス式のように燃料の備蓄が前提となる方式では、平時における燃料の調達ルートや保管場所の確保も合わせて検討する必要があります。加えて、太陽光発電や蓄電池との組み合わせを検討する場合は、日常的な電力コスト削減効果も含めた長期的な投資回収の視点を持つと、経営面での説明もしやすくなります。

導入後は、担当者を決めて点検スケジュールを管理し、実際に停電を想定した起動テストを定期的に行うことも重要です。書類上は非常用発電機を備えていても、実際の作動確認を怠っていると、いざという時に機能しないリスクが残ります。日頃からの訓練や点検の積み重ねが、非常用発電機を「名目上の備え」から「実際に機能する備え」へと変えていく鍵になります。

まとめ

介護施設における非常用発電機は、単なる設備投資以上の意味を持ちます。利用者の生命を守るための災害対策、法律で義務化されたBCP対応、そして施設としての信頼性向上という三つの側面から、その必要性は年々高まっています。ディーゼル式、ガソリン式、LPガス式(定置・可搬)、太陽光発電、蓄電池と、それぞれ特徴の異なる選択肢があるため、施設の規模や運用スタイルに合わせて組み合わせを検討することが望ましいでしょう。導入時には容量や設置スペースを慎重に見極め、導入後は振動・騒音への配慮と定期点検を欠かさないことが、非常用発電機を「本当に使える設備」にするための鍵となります。